第6回プライマリ・ケア連合学会学術大会(島勝江)
2015年06月13日
生活習慣が極端に不摂生な利用者の訪問看護を通じて思うこと
-境界型人格障害疑いの困難ケースから-
リハビリ訪問看護ステーション ルピナス
看護師:島勝紅
看護師:松井豊晴
理学療法士:田中仁
介護保険法では「要介護状態となった(中略)可能な限りその居宅において(中略)自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならない。」とされ、住み慣れた地域で主体的に自律した生活を送ることができるよう権利が保障されている。一方、同法では「(前略)加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な(中略)サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする。」と国民の義務も明記されている。
今回経験したケースは40歳代女性、独居(被保護世帯)。主介護者は近隣在住の元夫。要介護5。糖尿病、境界型人格障害疑い(未治療)。食事時間は不規則で嗜好品(酒・タバコ含む)のみ摂取。内服薬は自己判断で選別し内服。睡眠も不規則。障害者施策については論理的に話すことができ知的な一面もあるが、昼夜問わず不定愁訴を頻回に電話。これら問題について本人、元夫ともに改善しようとする行動が全くなく、また業務に支障をきたすことから訪問看護に限らず多くの事業所から契約解除されていた。
富樫は「主体的な決定であること、及び決定された内容が社会的価値に合致することに対して正当性が認められるために、自己決定が尊重されるのである。」と言っている。サービス担当者会議で地域包活支援センターや保護課担当者に「本人のためにも精神科で適切な治療ができないか。」と提案するも、「本人の意思を尊重する」と却下された。
看護師として極端に不摂生な生活をし続ける利用者に教育するも、聞き入れてもらえないと無力感に覆われストレスが強くなる。今回は繰り返す説明と説得により精神科に入院できた。このような場合、本人には精神科領域の病識がないことから、『自傷他害の恐れ』とし、適切な心身の治療を受けさせることができる制度を期待したい。